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【おとどけアート 札幌市立西岡南小学校 × 小林大賀】活動を振り返って1/2

ソーシャル・ディスタンスと交流

 11月中旬頃、札幌市内の新型コロナウイルス感染症の感染者数が増え始めていたなか、推移を注意深く見守りながら学校と連絡を取り合い、状況が許すかぎり学校に通うことができる運びとなった。

 前半の動きとしては、まずアーティストが一体どんな人であるのか子ども達や教職員の方々に知ってもらうために、活動拠点としてあてがわれた体育館のステージ部分を使って、アーティストの過去に制作した映像の作品を見られるような空間を設えた。一度にステージに入れる人数に制限がかけざるを得なかったり、保護者の方に見ていただく予定だった参観日が感染症拡大防止の観点から中止となってしまったものの、学校側の要望もあって上映する内容を入れ替えた上で、2週間もの間行われることとなった。普段、始業式などの儀式や、体育の授業でしか使われていなかった空間が、アーティストによって新しい価値が付与された不思議な場になったことが、その場にいた子ども達の表情や反応から見えた。そうした映像作品の上映会と並行しながら、体育館前の廊下に休み時間にアーティストが自宅からリモートでの交流を試みたり、映像作品の感想やアーティストへの質問を書いたり、逆にアーティストからの質問に答える用紙と投函箱の設置をしたり、途中家で描いてきたという絵をプレゼントしてくれた子どもに、そのお礼として似顔絵を描いたりするなど、様々なことを行った。さらに給食時間には、アーティストによるアトリエの紹介や、夢についての自身にまつわる話をビデオレターとして放送した。 それらに対しての子ども達の反応を見ると、作品を見る機会やアトリエ紹介といった、アーティストの創作物や周辺に漂う雰囲気から、もしかすると直接会って話すといった交流よりも、本人の人と成りが伝わっていたかもしれないと感じた。

【おとどけアート 札幌市立西岡南小学校 × 小林大賀】活動を振り返って1/2_a0062127_16491128.jpg

 その一方でアーティストはというと、様々なことを行いながら学校での日々を過ごすなかで、学校教育の変遷や、子ども達を取り巻く環境について気になった要素を先生に尋ねたり、教科書や資料を読んだりして、自分は何をすべきなのか、何ができうるのか手探りを続けていた。 そうした状況から、前半の活動期間は、ひたすら子ども達はもちろん教職員の方々にアーティストのことを知ってもらうためであり、ようやくここから何ができるのか、という素地作りをしてきたように思う。当初は状況次第で12月中でもって活動が終わりとなることも想定しながらのスタートであったことから、改めて学校と協議し、冬休み以降も継続して活動を行えることになった。

 冬休みが明ける直前、今後の活動についてアーティストから映像作品を作りたいという打診があった。それは、これまでの活動の中で見たこと、考えてきたことを子ども達に投げかけ、自分自身のやっていることが自分にとって良いことなのかどうか確かめる試みでもあるという。具体的には、とある“祭”を2月5日の活動最終日に開催することとし、その祭自体はもちろんのこと、祭に向け必要なものは何かを子ども達と一緒に考えたり、何かを作る様子も含めて映像で撮影していき、それらを最終的に映像作品化するというものだ。 祭自体、様々な意味合いで行われている儀式であり、例えば神仏や祖先をまつるためでもあり、何らかの記念を祝ったりするためでもある。そこで、今回アーティストが考える祭がどのようなものであるのかを子ども達に伝えるために、冬休みが明けて数日がたってから「もう会えないのまつり」という名前がつけられた。この”もう会えない”という言葉は、私たちが活動している場所に通うように来ていたとある子どもが、アーティストと話した何気ない会話で出てきた言葉だった。その言葉に帯びているニュアンスが、学校にいる1年生から6年生まで幅広い発達段階にある子ども達に対して、アーティストが考える際のイメージ を伝えるために有効ではないかと考え引用した。かくして、活動の後半は 「もう会えないのまつり」に向けて日々奮闘するものとなっていった。

【おとどけアート 札幌市立西岡南小学校 × 小林大賀】活動を振り返って1/2_a0062127_16500226.jpg

 そうして迎えた冬休み明けは、新たに空き教室を活動場所として使わせていただけることとなった。新しい場所でこれからの準備と進めている中で改めて登校すると子ども達の様子に少し変化が見受けられた。 私やアーティストと廊下などですれ違うときの挨拶の際に、活動当初はその場に立ち止まってお辞儀をしていたのが、そういった姿が見られなくなったことだ。これは、ただ礼儀を欠いている行為なのではなく、子ども達の私たちへの認識が変わった現れであり、お互いの“距離”が近づいたような印象だった。 冬休み前の活動を”素地作り”と捉えていたことも相まって私にはこの雰囲気の変化が活動の一つの分岐点だったように思えた。

さて、改めて“まつり”に向けての活動だが、当日に着る衣装作り、それも一体どういったものがふさわしいのかを子ども一人一人が考え、デザイン案を絵に起こすところから始まる。「もう会えない」という言葉からどういったイメージを持ったのか、特定の誰かを思い描いたのか、アーティストの問いかけを頼りに子ども達が考え、描く。絵が出来たという子どもには、一人一人にアーティストがインタビューを行った。インタビューで子どもが話す内容は、大人でもハッとするような捉え方をしていることもあ り、同じ学年の子同士だったとしても一人一人のバックグラウンドや経験値の差があることを改めて感じた。この一連の流れでは、衣装を作る行為よりもどちらかといえば「もう会えない」について、どのように考えているのかを話し、対話してみることに重きを置いていた。しかしながら、一人一人の話を時間をかけて丹念に聞いていくには、当たり前だがアー ティストの体は一つしかなく、たくさんの子どもが活動に興味を持って関わってくれることは嬉しい反面、きっとやきもきしていたことだろうと思う。そうして、新たに活動場所として与えられたかつて空き教室だった場所は、 様々な学年の子どもが休み時間になる度にやってくる場所となり、衣装のほか、”まつり”当日に使う楽器作りや、"まつり”の開催を告知するポスター作りといった日々が続いた。また、それと同時並行して高学年の子どもには ICレコーダーを渡してインタビュアーとして「あなたにとってもう会えない人はいるか」「それはどういった人か」「もし会えたら何をしたいか」といった質問を色々な人に聞いてきてもらうことを依頼し、私たちは実際にインタビューを受けた子どものことは知らないながらも、戻ってきたICレコーダーの音声から様々な捉え方をしている子どもがこの学校にいることを観測した。 そして当日を迎えた「もう会えないのまつり」の開催日。体育館の機材倉庫にひっそりと眠っていたスモークマシンを使って体育館に幻想的な空間を作り、アーティストの知り合いのピアニストとシンガーの方の音楽に合わせて、アーティストと子ども達がそれぞれの「もう会えない人」を想いながら踊ったのである。そして後日、映像作品として準備の様子や、学校での日常の風景まとめたものを改めて給食時間にお披露目した。

「もう会えない」という言葉自体は、 人によって悲しさや寂しさを彷彿とさせる言葉かもしれないが、この活動を通して、「もう会えない」ならばその先はどうするのか、と前へと向かう意思のような、アーティストからのメッセージを子ども達は受け取ったのではないだろうか。


 この度、巷でソーシャルディスタンスが叫ばれるなか行われた西岡南小学校でのおとどけアートを振り返って、アーティストが掲げた「もう会えない」というキーワードもあり、私自身「距離」について考えさせられる機会となった。2020年の春先の段階では、そもそもおとどけアートというアー ティストと子どもが交流をするような事業自体を実施することができるのかどうかさえ見当もつかなかったし、実際に出会うことができるかすら活動が始まる直前まで予想がつかない状況であった。そういった状況で12月から活動が始まり、前半は映像作品を介してやビデオレターといったリモートでの交流を織り交ぜ、近くにいながらも「距離」を保った活動が展開された。それが活動の後半では一転し、「もう会えない」をキーワードに創作活動や対話を試み、目にも見えない「距離」にある人やことを「もう会えない」からこそ想い描けることを一人一人が見つめ直し再認識させてくれるような取り組みであったように思う。今ではすっかり、道ゆく人ほぼ全ての人がマスクをしていることが日常となったが、いつも会っているはずの人がふとマスクを外したときに、この人はこんな顔だっただろうか、という感覚を経験した人もいることだろう。しかし、逆に会えなくなってしまった人の顔は覚えているといった不思議な感覚にも似ている。つまるところ、今回の小林さんによる活動は、この「距離」があったからこそできた内容であり、今この時以上に意味があるタイミングはなかっただろう。なにより「距離」をチャンスとしてこれからの可能性を見出してくれた、私はそう考えている。

改めて、2ヶ月以上にわたり真摯に取り組んでくださったアーティストの小林大賀さんと、活動を受け入れてくださった西岡南小学校のみなさん、ご協力いただいた全ての方々に感謝いたします。

コーディネーター 杉本 直貴

参考:2020年度おとどけアート「札幌市立西岡南小学校 × 小林大賀」




by sair_ais_programs | 2021-06-04 16:53 | おとどけ/西岡南/小林大賀 | Comments(0)
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小学校にアーティストが滞在し子ども達と交流する事業
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