2020年度は、COVID-19の感染拡大にはじまり、収束を見ない中で終わろうとしています。 このCOVID-19の感染拡大によって、今年度実施を予定していた活動の中で、唯一アーティストによる直接的な関わりが見送りとなったのが、札幌市立新川小学校での下道基行さんによる活動でした。 現在、香川県直島で暮らす下道さんを、この状況中で札幌に及びすべきかどうか、実行委員会、学校、そしてアーティスト本人との話し合いの中で、活動時期を調整しながら、実施のタイミングをうかがって来ました。しかしながら、第2波、第3波、緊急事態宣言の発令にともなって、年度内の実施を断念することになりました。 下道さんとの交流を心待ちにしていただいていた学校はもとより、アーティスト本人、我々運営者もとても残念でしたが、さまざまな制約を考慮した中での活動よりも、よりベストな状態で実施できる方が良いという判断により、来年度に活動を持ち越すことを決定しました。 しかしながら、何もしていなかったということではありません。 さまざまな模索と検討を経て、コロナ禍でもアーティストと学校の関わりを生み出すことはできるのではないかという一抹の可能性を信じて取り組んだものがあります。 本リポートでは、コロナ禍で新川小学校とアーティスト下道基之さん、そしてコーディネーターが取り組んだ活動について3回に分けて紹介します。 初回の今回は、アーティストの作品紹介編です。 と、その前に、実は私コーディネーター漆は、コロナの状況が一時的に落ち着きを見せていた秋口に下道さんがお住いの香川県直島にお邪魔しました。(この段階では活動が中止になることは決定していませんでした。) 11月に新川小学校での活動を実施する前に、下道さんが普段どのような環境で、どのようなことを考えて制作をしているのか、札幌で何を実施ていくかの相談も兼ねて、コーディネーターとして体感したかったのです。 飛行機、電車、船を乗り継ぎ直島へ。 まずは、下道さんが普段制作やお仕事をしているアトリエ訪問から。 下道さんはそこの館長として活動しているのだとか。 そこで、直島や瀬戸内海に関する様々な情報を集めて定期的に展示などのプログラムを行なっているとのことでした。ちなみに私がお邪魔した時期は、直島に関して掲載されている観光雑誌の展示が行われていました。 ![]() もともとはパチンコ屋さんだったとのことで、地元の方々にも親しまれた場所だったことがよくわかります。 棚には、寄贈されたものから、下道さんが独自に集めたさまざま直島に関する資料がぎっしり!こうしたデータの集積の上で、展示のアイディアも生まれてくるのでしょうか。 下道さん個人のアーティストとしての活動のとは別な一面も垣間見ることができました。 ![]() アトリエ訪問の後は、下道さんと札幌の小学校でどんなことができそうか、意見交換をしながらの島めぐり。 北海道から遠く離れた西の島の空気を感じながら、北国のことを考える。 なんとも不思議な時間でした。 そして、様々なアイディアを共有しながら、活動の意義やねらい、活動を実施する上で大事にして生きたいポイントなどお話をすることができました。 さて、こうした貴重な機会を経て、初めに仕掛けたのが、新川小学校での作品紹介でした。 学校に訪問する前に、作品展示を行うことに若干の迷いがあったものの、実際にアーティストがやって来る前に、遠く離れた四国に住むアーティスト下道基之とはどのような人物なのか。子ども達や先生に、言葉や文章だけでなく作品を通じて知ってもらおうと考えたわけです。 11月に入りいよいよ展示スタート。 会場は、3階の特別教室。 展示した作品は下道さんの代表作でもある《津波石#04》《津波石#05》の二つの作品。 津波によって流されて来た巨石を定点で観測・撮影した映像作品です。 合わせて、下道さんの写真集や、下道さんの作品が掲載されている雑誌などの資料も設置。 ![]() 派手な演出や予告をせず、或る日突然不思議な映像作品が小学校に現れた展示室。 覗き込む子ども達は戸惑いを隠せません。 「これ何?」「石?」「どういうこと?」 ![]() 休み時間になるとポツリポツリ子ども達が展示室にやって来て、首を傾げながらも映像を見たり、資料に目を通したりしています。 謎は深まるばかりです。 この謎の空間と作品について解き明かされるのは11月になってから。 現場を預かるコーディネーターとしても特別な説明や解説は極力控えながら、ご本人登場で、子ども達や先生がどのような反応を示すのか、そして下道さんとどのような対話が生まれるのかとても楽しみにしていました。 ・・・ところが。 10月末からCOVID-19の感染者数が増加。 札幌市内はもとより、全国各地で状況が悪化。 果たしてこの状況でまともな活動ができるのか、、、。 様々な協議の結果、私たちは11月の活動実施を見送り、12月に改めて実施を模索することを決断しました。 もちろん12月に実施できる保証はどこにもありませんでしたが、一旦引き延ばすことで少しでも実施の可能性を残しておきたかったのです。 こうして、下道さんの作品展示はCOVID-19感染拡大によって想定より長く小学校に展示されることとなりました。 さて、次回は「リモート授業編」をお送りいたします。 COVID-19と戦う我れの苦闘をぜひお楽しみに! ■アーティスト紹介 下道基行/SHITAMICHI motoyuki(写真家/岡山県) 1978年岡山県生まれ。2001年武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業。2003年東京綜合写真専門学校研究科中退。大学卒業後4年間、時間をみつけては日本全国を旅し、2005年日本全国に残る 軍事遺構 の現状を調査撮影した『戦争のかたち』をリトルモアより出版。その後、自らの祖父の遺した絵画を追って旅したシリーズ『日曜画家/Sunday Painter』を展示と手製本の写真集で発表。その他、2004年より日本全国で放置されている軍事遺構を一時期だけスクウォット/再利用/イベントを起こしながらそれを記録していくプロ ジェクト「Re-Fort PROJECT」。2006年より日本の国境線の外側を旅し、日本植民地時代の遺構の現状を調査する『(torii)』、最近では用水路に架けられた木の板やブロックで出来た”橋のようなもの”を撮り集める『bridge』など。 幼い頃、近所の崖に貝塚を堀に出かけたり古墳に関心を持ち、考古学者になることを憧れていた。現在では、写真や文章を表現手段に、モノ/コトの残り方/消え方、それらを内包する風景の在り方など、目の前に広がる風景に興味を持ち、旅やフィールドワークをベースに、表現を続けている。 下道基行HP:http://m-shitamichi.com/
by sair_ais_programs
| 2021-03-12 15:42
| おとどけ/新川小/下道基行
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