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【おとどけアート 斉藤幹男×手稲北小学校】活動を振り返って<コーディネーター編2>
アーティストがもたらした関係性

 「おとどけアート」は事業が始まって10年目を迎え、毎年新しいアーティストと活動を行ってきた。そんな中で今回、手稲北小学校に通うことになった斉藤さんは、「おとどけアート」の活動に携わるのは2回目。これは昨年度から実践している、過去に参加したアーティストの再参加の試みである。アーティストが1回目と2回目を別々な小学校で同じ方法を用いて活動を展開したときに、小学校の状況が異なっている場合にどういった要素が生まれるのか、また、アーティストの学校を捉える目、思考にも変化は表れるのか、私自身もそういったことに興味があった。


 斉藤さんの1回目の活動は、まだ「おとどけアート」事業が始まったばかりの頃で、あらかじめプランを実施校と共有した上で活動を行う形式で行った。当時は映像作品をつくる活動を行ったので、一定数のシーンの撮影が不可欠で、活動後半はスケジュールに追われてしまう面もあった。

 そういった1回目の様子を踏まえ、今回、斉藤さんと重ねた打ち合わせでは、いくつかプランを挙げて頂きながらも、最終的には、実際の活動に入ってから、無数の可能性をできうるかぎりニュートラルな状態で捉えられるよう、あえて白紙に近い状態にして活動を迎える方針となった。明確に目的を設定しそれに向けてワークを行うと、活動自体がわかりやすくなるのだが、その一方でその時その場で起こる不確定な要素に対して柔軟性を担保することが難しくなってしまう。とはいえ、1度経験のあるアーティストならば尚更、この方針をとることはプレッシャーも大きく、きっと心中は穏やかではなかっただろうと想像する。
 活動初日にはアーティストが過去にどういった作品を作ってきたか、あるいはどんな活動をこの学校でしていくかを話す、自己紹介のような機会を設けることが多いが、今回は子ども達がアーティストに対し「この人はこういった作品を作ってくれる人なんだ」という先入観を持つことを避けるため、それすらも行わず、文字通り体一つで活動を始め、1回目とは異なる方向からのアプローチとなった。
【おとどけアート 斉藤幹男×手稲北小学校】活動を振り返って<コーディネーター編2>_a0062127_09224147.jpg
 実際の活動を通して印象的だったのは、アーティストと子ども、もしくはアーティストと先生といった1対1のコミュニケーションで築かれたそれぞれの関係性が、まるで並列されたタイムラインのような形で、同時に進行しているように感じられたことだった。斉藤さんが自分の上靴を作ってくれるよう子ども達に呼びかけたり、活動場所の「アイコン」を考えてもらったりをすること通して、日々の中で徐々にそのタイムラインの数が増えていき、ある一つのタイムラインに複数人が巻き込まれていったり、別々のタイムラインだったもの同士が交わったりと、アーティストを中心にそれが広がっていく。そんな様子を見ていて、それぞれのやりとりの続く先には何があるのだろうかと、期待や不安をないまぜにしながら見てみたいと思った。側で見ていてもそのような気持ちになるのだから、アーティストや子ども達といった当人達はより強くそれを感じていたはずで、だからこそそれが継続的に活動場所に訪れる動機ともなっていたのではないだろうか。
【おとどけアート 斉藤幹男×手稲北小学校】活動を振り返って<コーディネーター編2>_a0062127_23474683.jpg

 また、もう一つ印象的だったことを挙げるならば、アーティストが自身の手を動かすこと、自身の表現を極力しないという選択をしたことである。これは、上靴作りと「アイコン」作り、いずれも、そこから子ども達が持っている魅力を見出す仕掛けとしてのお願いであり、どんなものが良いのか考えるのも子ども、実際に作るのも子ども、といった具合に、子ども達が自分で魅力的な表現を見つけると同時に、アーティストのためにそれぞれ技巧を凝らして一生懸命に何かを作る、というそのホスピタリティに感動した。
【おとどけアート 斉藤幹男×手稲北小学校】活動を振り返って<コーディネーター編2>_a0062127_16584798.jpg
 また、最終日に先生から頂いた授業の時間で、6年生に向けて自らの作品を見せるまで、一切自身の表現を見せることをしなかったというのは、「おとどけアート」のこれまでの参加アーティストの中でも稀有なことであり、アーティスト本人の挑戦となったはずだ。
【おとどけアート 斉藤幹男×手稲北小学校】活動を振り返って<コーディネーター編2>_a0062127_16352031.jpg
 最終的にアーティストは、誰の目にでも見える形で作品と呼ばれるものを制作したわけではなく、個々との関係性の中で見出した魅力的な要素、違う学年に面白い一面を持った子がいること、毎日会っているのに知らなかった先生の意外な特技、などいずれももともと学校の中にあったものが混在した場をそこに作ろうと試みた。そこに学年学級や、子どもと先生という区別すらも超えた新たなプラットフォームの存在が垣間見え、今までになかった価値観や関係性を生み出すような可能性があることを予感させてくれたように思う。
【おとどけアート 斉藤幹男×手稲北小学校】活動を振り返って<コーディネーター編2>_a0062127_17135892.jpg
 最後に、1回目とは全く逆ともいえるアプローチで、学校におけるアーティストのあり方を提示してくれた斉藤さんと、何事にも柔軟に対応していただき、また色々なお話を聞かせてくださった手稲北小学校の教職員の皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

コーディネーター 杉本


by sair_ais_programs | 2020-06-06 20:20 | おとどけ/手稲北小/斉藤幹男 | Comments(0)
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小学校にアーティストが滞在し子ども達と交流する事業
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