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【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>

 もう、しばらく経ってしまいましたが、

「おとどけアート」の体験は色濃く、自分の中に残っていくと思います。

きっと今後も忘れることのない、素晴らしい体験だったと思っています。 


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_01471711.jpg

 僕はこれまで主に展示をするというスタイルで制作活動をしてきました。それは、はじめイラストレーターや、絵本作家のような、いわゆる絵を描いて生業をたてるというところからはじまっています。絵を描くということが好きでそうなっていきましたが、絵を描く職業というのは、大概制約が発生します。むしろ制約あっての職業というところがあるようにも感じます。

 そんななか、自分の絵を貫き通している方ももちろんいらっしゃいますが、それは極々一部で、世の中の仕組み的にはプロなんだったら描きたくなくても描くのが職業。という感じになっている気がしています。僕自身、今でもイラストの仕事をしている中で、そこは否めないと思っています。ですが、今では無理なくできるようになりました。それは、仕事だから仕方がなくやっているというところももちろんあるのですが、表現することの本質や、考える楽しさに出会ったからだと思っています。


 職業として絵を描くコトをやっていくのは、いろいろと制約が厳しく、自由に絵が描けません。そんなことを考えて制作しているうちに、気がつけばアートと呼ばれるような制作が主になっていきました。僕にとってこの二つはまったく、大きな違いがあって、ただ要望されたものをどんなに描けなくても描く。ということと、たとえ描くのがどんなにいやでも、自分でどう考えてどんなふうに描くか?という違いです。僕は非常勤講師をしていますが、近頃の学生さんをみると、形の良いもの、一目で美しいと思うもの、など、いわゆる”うわべ”が優先的になってしまっている気がしています。綺麗なもの、規律が取れているもの、みんなが同調しているものが良い、そのように考えるはとても悲しいことだと思うのです。


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_01475973.jpg

 小学校に約30年ぶりに入って、はじめの印象は、素晴らしいの一言に尽きました。先生方は、一人一人の子ども達にしっかりと目を配っているし、子ども達もみんな素直で明るくきちんとしているコばかり。ほんとに素晴らしいと思いました。


 けれども、同時に、なにか恐ろしさのようなものも感じました。みんなが右にならえをすることができる素晴らしさ、その中にとてつもない怖さを感じました。 世の中の風潮として、特に近年外れたことを出来ない空気みたいなものがあるように思います。そこに学校のみんなも準じているようでとても不安になりました。小学校に入って、そんなことを感じたので、まず、いろいろな年代の人にアンケートを取ることにしました。

 自分が小学校の時に、どんなことを感じて、どんなふうに生活してきたか?それを取ってみてわかったことは、美術や、芸術方面に来る学生さんは、みんな、どこかトラウマのようなものを抱えていて、「勉強や、運動や、人付き合いは苦手だけれども、お絵かきだけはずっと好きなんです。」と答える子ばかりで、僕自身、を省みてもそんなところがあると思いました。


 ただ、自分の時代と圧倒的に違うところとして、今はインターネット環境が発達して、”情熱が情報に変わってきてしまっている”ところなのかと思います。自分の心から信じるものがゲームのキャラクターだったり、アニメのキャラクターだったりする。そして、それに賛同してくれる人がいくらでもTwitterの中にいる。SNSを通じれば、いくらでも自分の愚痴を発表して、聞いてくれる人がいる。

 デジタル技術の進歩によって、色を塗ることが上手にできなくても瞬時に機材が綺麗に塗ってくれるし、いくらでも簡単にやり直しが効きます。別にリスクを背負わなくても、本質を掘り下げなくても、簡単に発表できるし、削除も出来る。最高ですが、個人的にはそこにとても危機感を感じています。


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_01492408.jpg

 そんなことを考えながら、アンケートと同時にまずやったことは、自己紹介でした。単純にまずは僕がどんなことをして生きてきているのかを見せたいな、と思ったのと、活動している場所に作品が増え続けて行って、なんか不思議なところが出来たけど、それが瞬間的に無くなるという衝撃を作りたかったからです。今考えると、壊したいという気持ちがあったのだと思います。それと、具体的には、与えてくださった場所にクラフト紙張り巡らせて、マジックや、色紙、ハサミ、テープなどを置いて、なにをしても良い、落書きし放題、放っとき放題な空間をつくりました。


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_16262733.jpg

 「おとどけアート」の依頼をいただいた時、僕は、いろいろなことを感じて、考えすぎる、いわゆる過渡期に入っていました。 お話をいただいた時、そのことを素直に言ったところ、「むしろそのまま小学校に入って、何もできなければ何も作らなくていいです。」と言われました。そんな風にお仕事を振ってもらえる環境は、なかなかありません。というか初めてでしたので、不安ながらもありがたく受けることにしました。

 で、自己紹介から始まったわけですが、ほんとにその後のプランは全く無く、展示を主な制作としていた僕としては、自己紹介という展示が全てで、ひたすら毎回作品を運び続けました。大変でした(笑)。展示が全てでしたが、そんな中、何もしなくていいって言っても、何か、形に残るモノをできないか?と考えながら小学校に通いました。


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_16112133.jpg

 たくさんたくさん考えて、やれることをやってみようと、自分の専門であるシルクスクリーンをやったり、コンセプトから考えて凧作りをやったり(あ、これはしっくり来てたけどボツにされました(笑)!似たようなコトをやってる人がいるということでそうなりましたが、結果としては、ボツで良かったなとほんとに思いました!)、小学校の子ども達がやっている課題を自分もやってみたりなど、思いついたことを、やれることを一つ一つやっていきましたが、どれもどこかしっくりきませんでした。

 

 ただ一つ、自分が小学校を活動の場として与えてくださっていた場所では、自己紹介として、とにかく今までの自分の作品も増やしてましたし、シルクスクリーンで作った旗とか、凧とか、思いついたことの全てはそこにあって、とにかく色々なモノが増えていきました。クラフト紙は落書きの嵐で、置いておいた画材、素材も全てめちゃくちゃになっていて、すごくカオスな空間になっていたのが、とても面白かったです。そこで、そこに作られた落書きやら、なんだかわからないモノにお返事をしていきました。めちゃくちゃに描かれたモノへのお返事。具体的には、好きに何かを描き足していったのですが、次の日にはまたすぐにめちゃくちゃになってる。そこにまたなんらかのお返事をする。それはとても面白いことでした。

【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_15445537.jpg

 

 正直に言うと、何も作らなくても良いよ!と言われて入った小学校は、はじめはとても苦痛でした(笑)。何か作らなければいけない、というプレッシャーがあったからです。けれども、不安ながらも苦し紛れにやったことにちゃんと反応があることはとても面白いなと思っていました。けれど、何かねらってできないか?ということも常に考えて暮らしていました。


 試行錯誤して、最終的に自分の制作の形として腑に落ちたのは、「オクラホマミキサー」をみんなで踊りたい!ということでした。自分が小学生だった時のちょっとしたトラウマだったフォークダンス。女の子と手を繋げなかったり、踊りを踊らされるのがとても嫌だったことを、ここで克服したい!今だったらできる!という、とても個人的なプランでした。そんなコトを制作にしたことはなかったので、自分の中ではとても不安でしたが、純粋に面白いのではないか?と思いました。よし!これは面白い!と思って、ちょこちょこと先生方や、来てくれる学生さんに声をかけ、最終日の朝の全校放送(テレビを通じて全学年の子ども達が見てくれる朝の朝礼。自分の時代には無かったので衝撃でした(笑))で、その宣伝もして、満を辞して最終日の自由時間に臨みました。


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_10443497.jpg

 最終日のその時間、本当にたくさんの子ども達が自分の与えられた場所に来てくれたので、そこでガンガン音量を上げて「オクラホマミキサー」を踊ろうとしました。けれども子ども達のはしゃぐ声で音がかき消され、落書きを継続してやる子、シルクスクリーンで旗を作りたい子、ただ大はしゃぎしたい子、画材と一緒に置いておいた楽器や、道具(下駄とか置いてました(笑))を引っ掻き回す子、などなど全くコントロールできない環境がそこにありました。何もあやつれない(笑)わ!!大変だ〜!と思うと同時に、子ども達は本当に素晴らしいな!と思いました!結果として、何をやったか?やれたのか?ということについては、なーんにもできなかった!ということなのかもしれませんが、そこにとても満足感と可能性を感じることができました!ほんとは、モノづくりとしてはダメなのかもしれませんが(笑)。


 今のご時世にたくさん、これをやってはいけないとか、こうするべきだとか、そういった抑圧や同調をかき消すことが少しでもできたのかな?と思います。絵を描くこと、モノを作っていくことの本質は”考えること”と、”考えないでやってしまうこと”なんだなと、とても感じさせてくれる場でした。社会の中で、これが生業になっていく人がどんどん増えて行ったらいいなと思います。

 落書きが得意な子、まとめるのが得意な子、壊すのが得意な子、作るのが好きな子、おしゃべりが好きな子、黙って見てるのが好きな子、そこに入りたいけれど入れない子、などなど、あらゆる全ての子がいて成り立っていた空間で、社会の中の大人も子どももそんな風になっていくといいのになってココロから思うような、感動がありました。そんなことを感じさせてくれた「おとどけアート」は、自分にとって、忘れ難いものになったと思います。

 

 アーティストだけでなく、美術や芸術に全く関心がない方も、もし小学校に戻れたら、改めて感じることがきっとたくさんたくさんあると思いました。どんな環境でも、時代でも、子ども達はハツラツとしていて、それを大人も一緒になって感じられる環境が、今後の世界が平和になっていくのではないかな?と思いました。おとどけアート。素晴らしい体験でした! またやりたいです!


【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_13282426.jpg

 

 最後に。大変よくしてくださった美しが丘緑小学校の先生方、良い先生ばかりで、甘えっぱなしでした!心から感謝しております。特に1年生の授業にはたくさん呼んでいただき、ほんとに楽しかったです!美しが丘緑小学校の子ども達みんなにもとっても感謝です!みんなとても素直で素敵な子ども達ばかりでした!制作場所のお隣の特別学級の子達は、お隣ということもあり、とても仲良くなれた気がしています。学級のお二人の先生も暖かくしてくださり感謝しかありません。どうもありがとうございました!必ずまた遊びに行きたいと思います。

 

 そして、おとどけアートのコーディネーターさん。作家にとってコーディネーターの存在はとても大きな存在だと思いました。悩んだり楽しんだりを一緒にできる。コーディネーターもアーティストだと思いました!心強かった、ほんとに感謝しています。これからもおとどけアートが続いていくと良いなと、切に思います。



【おとどけアート×森迫暁夫 美しが丘緑小学校】活動を振り返って <アーティスト編その1>_a0062127_22081004.jpg

森迫暁夫/Akio Morisako (イラストレーター・美術家) 1973年長野生まれ東京育ち、札幌在住。2009年、倉敷芸術科学大学大学院通信制芸術研究科修了。北海道テキスタイル協会会員。「sprouting garden~萌ゆる森~」(札幌、芸術の森、2014)、「つながろう展」(札幌、地下歩行空間、2015)、「ウォーターフロート展」(東京、ペーターズギャラリー、2016) 、「CONNECTERS」(札幌、ル・トロワ、2017)、「シャイシャイン展」(札幌、大丸藤井セントラル スカイホール、2018)、 「生えたての道草」(札幌、hato coffee、2019)、「飛生芸術祭/TOBIUCAMP」(白老、旧飛生小学校、初年度より参加)他、イラストの仕事多数。


by sair_ais_programs | 2020-06-06 20:09 | おとどけ/美しが丘緑/森迫暁夫 | Comments(0)
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小学校にアーティストが滞在し子ども達と交流する事業
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