【おとどけアート 札幌市立本町小学校×中島佑太】最終日前編:井戸の中から見える空
札幌市立本町小学校でのおとどけアート九日目。

実は本日が、今回の中島さんの滞在最終日なんです。

朝、学校に行くと何人かの子ども達から、開口一番
「アートはいつできるの?」「完成したの?」
と質問されました。

a0062127_15335102.jpg

これまで毎日関わっていて今更何か作品的なものが出来上がると思っていたんだ!と逆に驚かされた部分もありましたが、「アーティスト(芸術家)が学校にやってくるということ=何か作品を作る」というイメージを多くの子どもたちや先生が抱いていたことは間違いありません。

本ブログでも繰り返し説明していますが、今回中島さんの活動は、いわゆる美術作品や音楽作品を目に見える形で作り上げて行くことをゴールとして設定しませんでした。その代わり、子ども達や先生、あるいは地域の方々との出会いと交流を通じて発見したことを話し合ったり、確認し合ったりということを積み上げると言うことだけを決めてスタートしています。

そもそも中島さんは、絵画、彫刻、音楽、パフォーマンスといった多くの人が芸術に対して思い描く表現を展開するタイプのアーティストではありません。様々な手法を用いて自分以外の誰かとの対話やコミュニケーションによって活動テーマを導き出したり、学校、幼稚園、団地など特定のコミュニティの中で表現をする状況そのものをいちから立ち上げていくタイプのアーティストでありますから、今回の設定はある意味必然でもあり、そうした活動の中でもあえて「何もしない。」「具体的なアクションは起こさない。」ということでいうと挑戦でもあったといえます。

中島佑太ホームページ



さて、話を戻してこの「アートはいつできるの?」「完成したの?」という問いを前提に最終日の活動を通して今回の取り組みを学校での活動以外の取り組みも含めて前編・後編の二回にわたって振り返ってみたいと思います。


まずこの前編で触れてみたいのは、「井戸端会議」で中島さんが試そうとしたこと。
空き教室の真ん中に無造作に置かれた井戸があるだけの状況である通称「井戸の部屋」には、毎日入れ替わり立ち替わり様々な子どもたちや先生が足を運んでいました。

登下校に挨拶だけしにくる子もいれば、授業と授業の合間に顔を出しにくる子、休み時間に常連のように通ってくる子もいます。
子どもたちとの会話は、学校での出来事、友達のこと、先生のこと、家庭事情などなど。

a0062127_15323550.jpg



特に、外国籍の親を持つ子どもたちの存在やエピソードは、私たちにとって大変興味深く、でも本町小学校では当たり前のように受け入れられていることに驚きました。
外国人労働者の受け入れに向けた法改正で揺れる昨今、近い将来加速するであろう異文化の人たちとの共生と、未来のあるべき社会のモデルのような(縮図のような?)学校の姿が浮かび上がってきました。

a0062127_15331084.jpg



また一方で、休み時間に子ども達とアーティストが戯れる様子を覗きたり、空いた時間を見つけてお話をしにきてことをくれる先生もいます。

a0062127_18195088.jpg

多種多様な背景を持つ子どもたちの存在。
ともすれば不安定な状態に陥ってもおかしくない現代の学校事情の中で、押さえつけ排除するのではなく、翻弄されながらも、理解できなくても、その不可解な存在を受け止めていく。
その姿勢は、制度やシステムではなし得ない、個々の先生方の裁量によって獲得した寛容性の現れであると感じました。
あ〜、だからアーティストも違和感なく受け入れられ、今回のような取り組みも拒絶されることなく日常の一部になり得るのだと、先生方との対話の中で納得することが多くありました。


最終日の放課後。
とある先生からのリクエストもあり、井戸の部屋で中島さんのこれまでの活動と今回の活動を共有する機会を作りました。
任意での参加でしたが、半分以上の先生が参加してくれました。

a0062127_18204762.jpg

活動の解説に加えてちょっとしたワークショプも交えた約1時間ほどの交流は、先生方にどのように受け止められたのでしょうか。
こうした機会を持ちたいと考え要望してくれた先生がいたこと、興味を持って理解しようとして集まってくれた先生方の行動に、多少なりとも報われる思いがあったことは間違いありません。

a0062127_15345210.jpg


井戸端会議というシチュエーションにおける対話やコミュニケーションの先に心揺さぶる「何か」が見えてくるかもしれない。
でも結果的に何も見えないし、何も起きないかもしれない、、、、。

そんな期待と不安が交差する状況任せの取り組みにおいて見えてきた「何か」は、普段の学校生活という子ども達や先生、そしてアーティスト本人の日常ではあまり意識することのない「別な世界の存在」「異文化」というものに意識的になること、「すきま」「余白」「余暇」といった本来あるはずで見過ごされているものを発見すること、そうした多種多様な存在の受け皿となっている日常そのものが、実は特別であることに気づくということだったのかもしれません。

先日のブログ記事でも紹介した「井の中の蛙、大海を知らず」のエピソード。
このことわざにの続きに「されど空の深さ(青さ)を知る」という言葉があります。
学校や子どもの社会は、一般社会と隔絶した状況であると言われることがあります。
でも実はそこから見える空には、様々な色やグラデーションがあって、それも世界の見え方の一つであること。
しかもその空は世界とつながっていて、そこからは見えない世界を想像すること。
井戸端会議とはそのようなことを訪れた人たちと確認する場所だったようにも感じています。

下校時間に井戸の部屋を訪れた常連さんの男の子。
彼は、活動開始当初から中島君に興味を示して、足繁く井戸の部屋にやってきては、家族のことや、趣味のことなど、自分のことをとにかく話してくれました。

a0062127_15353255.jpg

井戸の部屋に世界地図や地球儀を置いたのは、他でもなく彼の存在があったからでした。
そんな彼に最後に聞かれました。

「結局(作品は)完成しなかったの?」

こちらからも聞き返しました。

「何か物を作ったわけではないよね。じゃあ何が出来上がったと思う?」

その子は少し悩んで、

「友情?」

と、ちょっと恥ずかしそうに答えました。

その後、彼は最終日に初めて中島さんと一緒に下校しました。
彼の中で漠然と何かが完成する、出来上がると思っていた「アート」なるものは、中島さんと過ごす時間や空間という特別な日常と相待ってどのように刻まれていくのでしょうか。


後編に続きます。


by sair_ais_programs | 2018-12-12 15:48 | おとどけ/本町小/中島佑太 | Comments(0)
<< 【おとどけアート×上ノ大作 ひ... 【おとどけアート×上ノ大作 ひ... >>



小学校にアーティストが滞在し子ども達と交流する事業
by sair_ais_programs
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
カテゴリ
全体
事業概要
おとどけ/本町小/中島佑太
おとどけ/西園小/永田壮一郎
おとどけ/ひばりが丘小/上ノ大作
2018年度AIS
天神山AS/澄川南小/ミカ
おとどけ/山の手小/川上りえ
おとどけ/有明小/東海林靖志
おとどけ/拓北小/まるみデパート
2017年度AIS
おとどけ/苗穂/進藤冬華
おとどけ/西岡/深澤孝史
おとどけ/月寒東/長谷川仁
おとどけ/鴻城/山崎阿弥
2016年度AIS
おとどけ/平岸高台/黒田大祐
おとどけ/栄東小/小町谷圭
おとどけ/星置東/永田壮一郎
2015年度AIS
おとどけ/山鼻/持田敦子
トヨタ/苫小牧/藤沢レオ
おとどけ/藻岩/藤木正則
おとどけ/元町/ダムダン・ライ
おとどけ/北陽・白楊/加賀城匡貴
2014年度AIS
おとどけ/北陽/風間天心
おとどけ/三里塚/加賀城匡貴
おとどけ/北陽/佐藤隆之
おとどけ/資生館/アサダワタル
2013年AIS
おとどけ/もみじの森小/小川智彦
おとどけ/富丘小/本田蒼風
おとどけ/石山東/トムスマ
2012年AIS
AIS/茨城・守谷/磯崎道佳
おとどけ/みどり小/山本耕一郎
おとどけ/あいの里西/冨田哲司
十勝/中札内/遠藤一郎
おとどけ/稲積/小助川裕康
2011年AIS
おとどけ/旭小/片岡翔
おとどけ/常盤小/富士翔太朗
2010年度AIS冬期
おとどけ/福住小/斉藤幹男
十勝/大樹小/荒川寿彦
おとどけ/清田小/長谷川仁
2010年AIS秋期
おとどけ/北小/東方悠平
おとどけ/屯田南小/今村育子
文化/厚内小/開発好明
十勝/北中小/タノタイガ
2009年度AIS
十勝/シンポジウム
おとどけ/幌西小/ルカローマ
おとどけ/太平小/高橋喜代史
十勝/北中小/平原慎太郎
十勝/東士狩小/wah
2008年度AIS
トヨタ/新光小/河田雅文
トヨタ/新陵東小/宝音&図布
札幌/シンポジウム
十勝/北中小/荒川寿彦
十勝/広陽小/anti-cool
十勝/佐倉小/ルカローマ
2007年AIS
十勝/岩井WS
十勝/途別小/祭太郎
トヨタ/有明小/石川直樹
トヨタ/山の手南小/野上裕之
十勝/北中音更小/ルカローマ
十勝/大正小/クニ&美佳
文化/大岸小/磯崎道佳
トヨタ/清田小/加賀城匡貴
2006年度AIS
十勝/花園小/杉浦圭太
文化/ニセコ小 /磯崎道佳
2005年AIS
お知らせ
未分類
タグ
以前の記事
フォロー中のブログ
リンク
AISプランニング
最新のトラックバック
venussome.com
from venussome.com
http://venus..
from http://venusgo..
www.whilelim..
from www.whilelimit..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
始まっていますね
from 街中ホットニュース
アーティスト・イン・スクール
from とがびアート・プロジェクト2..
[おすすめ]アーティスト..
from すこし思いついたことを
アーティスト・イン・スクール
from ブログ*とがびアート・プロジ..
ニセコ小でアートイベント!
from 尻別川の畔より
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


Skin by Excite ism